この記事について
特定の担当者に仕事が依存していることに悩んでいる管理職・リーダーの方、メンバーの自律性を高めたい方、業務の属人化を解消したい方に向けて書いています。
先に結論を書くと、自分がいなくても回るチームとは、誰でも何でも判断できるチームのことではありません。判断基準と責任の所在が明確で、担当者が変わっても業務を継続できるチームのことだと考えています。この記事では、その考え方に至った実体験を紹介します。
一人の担当者に依存していた案件を引き継ぐ
過去に、特定の担当者が一人で担当していた案件を引き継いだ経験があります。その担当者が退職した後、顧客から案件の継続・展開について打診があったのですが、顧客側も自分たちの上司も、その担当者個人に依存していたため、案件の状況を十分に把握できないまま引き継ぐことになりました。
これは、担当者本人だけの問題ではなかったと思っています。担当者個人に業務が集中していたこと自体に加えて、上司も顧客も、その状況を前提にしてしまっていた。つまり、組織としての管理が不十分だったという、構造的な問題として捉えています。
手順書はあったが、判断基準がなかった
引き継ぎを進める中で分かったのは、手順書自体は存在していた、ということです。ただ、その手順書だけでは実際の作業を再現できませんでした。手順書に書かれていない判断が随所に必要で、そこは担当者個人の経験と感覚に依存していました。
当初は、予算や工数の都合もあり、自分がいわば属人的に作業を抱える形で案件を軌道に乗せました。ただ、同じことを繰り返すわけにはいかないので、引き継ぎも兼ねて手順化を進めることにしました。
機械的に処理できる範囲と、人が判断する範囲を切り分ける
手順化を進める中で特に重視したのは、機械的に判断できる範囲と、例外として人が判断する範囲を切り分けることでした。「手順書を作れば属人化は解消する」というほど単純な話ではありません。手順書に書けるのは、あくまで通常ケースの対応であって、例外は必ず発生するものです。
だからこそ、例外が起きたときに誰が責任を持って判断するのかを、あらかじめ整理しておく必要があります。例外をゼロにしようとするのではなく、例外が起きても業務が止まらない仕組みを作る、という方向で考えるようにしました。通常ケースを機械的に処理できるようにすることと、例外時の判断責任を明確にすることは、どちらも欠かせない両輪だと感じています。
判断することは、その決定に責任を持つこと
この経験は、今のマネジメントにもつながっています。現在、自分がメンバーに伝えているのは、「判断することは、その決定に責任を持つことだ」という考え方です。
判断を任せることは、単なる丸投げではありません。どこまでをメンバー自身の判断に任せ、どこからは上位者が判断するのか、その範囲と責任の所在を整理することが必要です。最終責任は上位者にあるという前提は変わりませんが、その前提のうえで、メンバー自身が責任を持って考え、自律的に進められる範囲を持てるようにすることを重視しています。
上司がすべてを判断する運用では、メンバーは常に指示を待つ状態になってしまいます。一方で、判断できる範囲が整理されていれば、メンバーは自分の責任の範囲内で自律的に動けるようになります。担当者個人の判断に依存する運用と、判断基準が整理された運用の違いは、ここにあると思っています。
「自分がいなくても回るチーム」とは
ここまでの経験から考えると、「自分がいなくても回るチーム」とは、誰もが何でも同じように判断できるチームのことではありません。通常ケースについては判断基準が共有されていて、例外が起きたときには誰が責任を持つのかがはっきりしている。そういうチームのことだと思っています。
担当者が変わっても業務が止まらないようにするためには、手順書を整備するだけでは不十分です。判断基準を定義し、例外時の責任の所在を整理し、その上でメンバーが自律的に判断できる範囲を少しずつ広げていく。この積み重ねが、結果として「自分がいなくても回るチーム」につながっていくと考えています。
まとめ
特定の担当者に依存していた案件を引き継いだ経験から学んだのは、手順書があることと、業務を再現できることは別だという点でした。通常ケースを機械的に処理できるようにすることと、例外時の判断責任を明確にすること。この両方が揃って初めて、属人化の解消につながります。
今も、判断することはその決定に責任を持つことだとメンバーに伝えながら、最終責任は上位者にあるという前提と、メンバー自身が自律的に進められる範囲を広げていくことの両立を意識しています。それが、自分がいなくても回るチームを作るための、今の自分なりの答えです。