この記事について

キャリアを会社や上司に決められたくない方、部下のキャリア支援に悩んでいるマネージャーの方、やりたい仕事と会社から求められる仕事の間で悩んでいる方に向けて書いています。

前回の記事では「人をどう評価するか」について書きましたが、今回は「本人のキャリア選択をどう支援するか」について書きます。先に結論を書くと、キャリアは最短距離じゃなくていいと思っています。最初から正解を当てるより、経験を通じて本人が選択肢を広げていくことに価値があると考えています。

「安定した配置」を選びがちな理由

マネージャーが能力や経験だけを見てメンバーの仕事を配置すると、失敗しにくい安定した人事になりやすいです。実績のある人に実績のある領域を任せれば、大きな失敗は起きにくくなります。

一方で、これは本人が新しいことに挑戦する機会を狭め、成長を阻害してしまう可能性もあります。安定を優先し続けた結果、本人が本当にやりたいことや、伸ばせたかもしれない可能性に気づく機会そのものを奪ってしまう、ということが起こり得ます。

まず本人の「やりたい」を起点にする

現在のマネジメント経験の中で、自分が意識しているのは、まず本人の「やりたい」を起点にすることです。能力や経験から逆算して配置を決めるのではなく、本人がどうなりたいか、何をやってみたいかをスタート地点にします。

本人の希望をスタート地点にすると、意思決定の主体がメンバー側になります。「任命された仕事」ではなく「自分が選んだ仕事」という意識が生まれるので、モチベーション面でもアドバンテージがあります。また、実際にやってみることで、本人が自分の適性や向き不向きに気づけるという利点もあります。

ただ、ここで一つはっきりさせておきたいのは、「希望を起点にする」ことと「希望だけを通す」ことは別物だという点です。マネージャーの役割は、キャリアを決める人になることではありません。本人が選択するための機会・情報・フォローを提供する人である、というのが自分の考えです。

「やってみる→振り返る→次を選ぶ」というサイクル

キャリア形成では、最初から最適解を当てるよりも、「やってみる→振り返る→次を選ぶ」というサイクルの方が重要だと考えています。本人が希望した仕事であっても、実際にやってみて「思っていた仕事と違った」となることはあります。

そうなったとき、自分は「失敗だった」で終わらせないようにしています。経験した後にきちんと振り返り、そのうえで本人がどうしたいかを一緒に考える。この振り返りと次の選択までを含めて、一つのサイクルとして捉えるようにしています。

マネージャーの「向いていない」という判断も、思い込みかもしれない

マネージャーから見て「この人には向いていないのでは」と感じるケースもあります。ただ、その判断自体がマネージャー側の思い込みである可能性もあると思っています。だからこそ、向いていないように見えても、あえて経験させることがあります。

本人が実際にやってみないと分からないことは、マネージャーが外から見ているだけでは分かりません。向いていないという判断を早々に下してしまうことで、本人が気づくはずだった可能性を先に閉じてしまうリスクもあると考えています。

会社員である以上、すべてが希望通りになるわけではない

ここまで本人の希望を起点にする話をしてきましたが、会社員である以上、すべての仕事を本人の希望だけで選べるわけではないのも事実です。案件を成功させる、顧客からの信頼を得るといった理由で、本人がやりたくない仕事を任されることもあります。

そういうときは、まずその仕事をクリアすることを優先します。やりたくない仕事であっても、そこをクリアできなければ、次にやりたい仕事を任せてもらえる選択肢そのものが狭くなってしまうこともあるからです。必要な経験として割り切る、という現実的な側面も、キャリア形成には含まれていると思っています。

寄り道は、後から意味を持つことがある

自分自身は基本的にポジティブに考えるタイプで、これまでのキャリアを「寄り道だった」と捉えることはあまりありません。思い通りにならなかった経験も、それも良い経験だったと考えるようにしています。

本人の経験を「これは寄り道だった」と断定するのは、マネージャーの役割ではないと思っています。その時点では遠回りに見えた経験が、後から別の形で意味を持つこともあります。だからこそ、本人の希望から外れた経験であっても、それを否定せずに振り返りの材料にすることを大事にしています。

まとめ

マネージャーが能力や経験だけで配置を決めると、安定はしますが、本人の挑戦の機会を狭めてしまうことがあります。だからこそ、まず本人の「やりたい」を起点にし、やってみる→振り返る→次を選ぶというサイクルを一緒に作っていくことを意識しています。

もちろん、会社員である以上、すべてが本人の希望通りになるわけではありません。それでも、最短距離で正解にたどり着くことよりも、経験を通じて本人が選択肢を広げていくことの方に価値があると思っています。キャリアは最短距離じゃなくていい、というのが、今の自分の実感です。