この記事について
自分と違うタイプの人をどう評価すればいいか悩んでいる方、部下や同僚の強みを活かしたいと考えている方に向けて書いています。
先に結論を書くと、すべてを自分でできる必要はありません。自分にできないことをできる人を認め、互いの強みを活かし合うことが、チームの強さにつながると思っています。この記事では、その考え方に至った実体験を紹介します。
「仕事ができる人」を一つの尺度で見ない
仕事ができる人、と一口に言っても、その中身は一様ではありません。ゼロから何かを立ち上げる0→1が得意な人もいれば、立ち上がったものを軌道に乗せる1→80が得意な人、すでに高い水準にあるものをさらに突き詰める80→100が得意な人、あるいは高い水準を維持し続けることが得意な人もいます。
プレイヤーとして優秀な人と、リーダーとして優秀な人も、必ずしも同じではありません。個人で成果を出す能力と、チームで成果を広げる能力も別物です。優秀なプレイヤーをリーダーにすれば優秀なリーダーになるとは限らない、というのはよく言われる話ですが、実際に色々なタイプの人と仕事をしてみると、この違いを強く実感します。
自分は1→80タイプ、一方で圧倒的な0→1タイプと出会う
これまでの仕事・マネジメント経験の中で、自分自身は1→80のような仕事が比較的得意だと感じています。何かの土台がある状態から、それを形にして広げていく仕事です。
一方で、0→1のビジネス発想や、それを実現するための熱量が非常に強い人と一緒に仕事をした経験があります。最初は「単に経験の差なのでは」と考えていました。ただ、実際に一緒に仕事をしてみると、単なる経験値の差ではなく、発想そのものや、それを実現に向けて動かす熱量の質が違うと感じるようになりました。
自分が同じだけ努力すれば同じ領域に到達できるか、と考えたときに、「これは努力すれば同じようにできる」というより、「この領域が得意な人に任せたほうがいい」と考えるようになりました。これが、自分にできないことができる人への尊敬の始まりです。
尊敬することと、すべてを肯定することは別
ここで大事なのは、その人のすべてが優れていたわけではない、という点です。その人は0→1では非常に強い一方、孤軍奮闘型で、チームで人を育てながら成果を広げていくことには弱さも感じました。0→1で作ったものを、その先の1→80のフェーズに引き継いでいくところで、周りを巻き込む力が弱いと感じる場面が何度かありました。
ここから、「尊敬すること」と「その人のすべてを評価すること」は別だと考えるようになりました。0→1の能力は本当にすごいと思う一方で、チームビルディングの面では自分の方がうまくできる部分もある。得意な領域が違うだけで、優劣の話ではありません。この整理ができるようになってから、人を「できる/できない」で単純に分類するのではなく、「どの領域で能力を発揮する人か」という見方に変わりました。
尊敬は、肩書きや実績で決まらない
自分にとって尊敬は、年齢・役職・国籍・過去の実績などでは決まりません。実際に一緒に仕事をして、自分の目で能力を見た結果として生まれるものです。
肩書きや実績は、その人がどこかのタイミングで結果を出したという事実は示してくれますが、今この仕事で何が得意で何が苦手かまでは教えてくれません。一緒に手を動かしてみて初めて、この人はここが強い、ここは自分の方が得意かもしれない、というのが見えてきます。この積み重ねが、自分の中での尊敬の基準になっています。
会社の人事は、失敗しにくい配置に寄りがち
ここまでは個人としての話でしたが、会社という単位で見ると、少し事情が変わってきます。会社の人事は、能力や経験を基準にすると「失敗しにくい安定した配置」になりやすい傾向があると感じています。
たとえば、0→1が得意な人を、安定運用が求められる別のポジションに異動させた結果、本来の能力を発揮できなくなってしまうケースを見たことがあります。逆に、今のポジションで優秀であるがゆえに、そこから動く機会を与えられないままになってしまうケースもあります。どちらも、能力自体は変わっていないのに、役割との相性が合わずに力を発揮しきれない状態です。
こうした話は、会社の人事制度そのものが悪いというより、能力と役割には相性がある、という前提を忘れると起きやすいのだと思っています。0→1が得意な人にとっての適所と、80→100を突き詰めるのが得意な人にとっての適所は、そもそも違う場所にあります。
適材適所は、会社の配置だけの話ではない
適材適所というと、会社が人をどう配置するかという話に聞こえがちですが、それだけではないと思っています。個人同士がお互いの強みを理解して、任せ合うところまで含めた話です。
自分にできないことを無理に自分で身につけようとするのではなく、得意な人に任せる。逆に、自分が得意な領域は自分が引き受ける。こうしたやり取りは、会社の制度がなくても、チームの中で日常的にできることです。自分自身、0→1が得意な人と仕事をしたことで、自分にできないことは無理に自分でやろうとせず、得意な人に任せるという判断ができるようになりました。同時に、その能力がどの環境・役割で活きるかまで含めて見る癖もついたと感じています。
まとめ
「仕事ができる人」を一つの能力だけで判断しないこと。0→1、1→80、80→100、維持といった能力の方向性の違いを認識すること。そして、尊敬することと、その人のすべてを肯定することは別だと理解すること。この記事で書いてきたのは、この3つに集約されます。
すべてを自分でできる必要はありません。自分にできないことをできる人を認め、互いの強みを活かし合うことが、結果としてチームの強さにつながる。そう考えるようになってから、自分と違うタイプの人と一緒に仕事をすることが、以前より単純に楽しくなりました。