この記事について
仕事を丁寧にやろうとするあまり時間をかけすぎてしまう方、資料や成果物をどこまで仕上げればいいか悩む方、仕事の優先順位をつけるのが苦手な方に向けて書いています。
先に結論を書くと、大事なのは完成度を一律に下げることではなく、その仕事にその時点でどこまでの完成度が必要かを判断することだと思っています。100%を目指すこと自体は悪いことではありません。ただ、あらゆる成果物に同じ完成度を求めてしまうと、時間はいくらあっても足りなくなります。
タスクが多いのに、なぜか期限を守れる人がいた
以前一緒に仕事をした中で、「仕事ができる」と感じた人がいました。その人は、かなりタスクを抱えているように見えても、期限に遅れることがほとんどありませんでした。
当時の自分は、単純に仕事の処理速度が速い人なんだろうと思っていました。ただ、今振り返ると、それだけではなかった気がしています。おそらくその人は、仕事ごとに必要な完成度を判断していたのではないか。完璧に仕上げる必要があるもの、80%程度で一度確認すればいいもの、壁打ちが目的なのでメモ程度でいいもの。成果物ごとに求められる完成度を変えていたように見えます。
どうやって切り分けていたのか、自分なりの仮説
実際にその人が頭の中でどう処理していたのかは分かりません。それでも振り返ると、必要か不要か、自分がやるべきかメンバーに任せるべきか、今やるべきか後回しでいいかを、かなり早い段階で切り分けていたのではないかと考えています。特に、締め切りを強く意識している人でした。
3つの進め方を比較してみる
仕事の進め方は、大きく分けると3つあると思っています。
一つ目は、すべてを最初から100%まで仕上げてから確認する進め方です。手戻りが少なそうに見えますが、前提そのものがズレていた場合、かけた時間がまるごと無駄になるリスクがあります。二つ目は、大枠だけを作って早い段階で確認する進め方です。細部を詰める前に方向性を合わせられるので、手戻りのダメージを最小限に抑えられます。三つ目は、壁打ちや方向性確認そのものが目的の場合で、この場合は最低限の内容、極端に言えばメモ程度で持っていく方が、かえって議論が進みやすいこともあります。
この人は、成果物ごとにどの進め方を取るべきかを都度判断していたのだと思います。大事なのは、完成度を一律に下げることではなく、「その成果物が今、どの進め方に当てはまるのか」を見極めることです。
前提がズレたまま丁寧に作ると、全部無駄になる
自分自身、最近似たような場面をよく目にします。年次の低いメンバーが仕様書などを非常に丁寧に作っている一方で、根本となる前提がズレているために、その後に作ったものがほぼすべて無駄になってしまうケースです。
これは家づくりに例えると分かりやすいと思っています。基礎や間取りが固まっていない段階で、壁紙やコンセントの位置を完璧に決めても、前提が変わればすべてやり直しになります。だからこそ自分は、最初から細部まで完成させるのではなく、大枠の基礎だけを作り、細かい仕様や拡張部分は後回しにすることがあります。前提が固まっていない段階で細部を詰めるのは、順番として早すぎるということです。
資料を作りながら、頭の中で顧客とロールプレイする
自分が資料などを作る際には、作りながら顧客とのロールプレイを頭の中で行っています。
「時間制約を考えると、この話まではしないだろう」「ここを詰めておかないと後の工程に響きそうだ」「前回の話から考えると、顧客が一番求めていそうなのはここだから、まずここを仕上げよう」。こういった具合に、実際に顧客と話す場面やその後の工程を想像しながら、どこに時間をかけるべきかを判断するようにしています。
この判断は、成果物を作り始める前の段階でできるだけ済ませておくのが理想です。作りながら判断が変わることもありますが、最初にある程度の当たりをつけておくだけで、無駄に細部を詰めすぎる時間はかなり減らせます。
良かった点: 本当に重要な部分に力を使える
この考え方を意識するようになって良かったのは、必要以上に時間をかけることを避けられるようになったことです。早い段階で方向性を確認できるので、後から大きな手戻りになるリスクも減ります。結果として、限られた時間の中で、本当に重要な部分に力を使えるようになりました。顧客が何を求めているのかを考えながら仕事を進める習慣にもつながっていると感じています。
悪かった点: 判断を誤ると、ただの手抜きになる
一方で、リスクもあります。どこまで仕上げればいいかの判断を誤ると、単純に品質不足になってしまいます。特に経験が浅いうちは、そもそも何が重要なのかを判断すること自体が難しく、この考え方をそのまま実践するのは簡単ではありません。
何より注意したいのは、「80%でいい」という考え方だけが独り歩きしてしまうことです。それは完成度の判断ではなく、単なる手抜きになってしまいます。重要な部分まで簡略化してしまうと、結局は後工程で大きな手戻りにつながり、本末転倒です。80%という数字自体に意味があるわけではなく、あくまで「今この成果物にどこまでの完成度が求められているか」を都度考えることが本質だと思っています。数字を絶対的な基準にしてしまうと、本来考えるべき判断そのものを放棄することになりかねません。
まとめ
仕事の完成度は、いつも100%である必要はないと思っています。ただし、これは完成度を一律に下げていいという話ではありません。重要な成果物や後から変更しにくいものは、しっかり仕上げる必要があります。一方で、壁打ちや方向性確認のように、後から変わる可能性が高いものまで、最初から完璧に仕上げる必要はありません。
自分自身、昔からこの判断ができていたわけではなく、経験を積む中で少しずつ身についてきた感覚です。「なぜこの人はタスクが多そうなのに期限を守れるのだろう」と感じたところから始まった、自分なりの仮説として、この考え方をこれからも磨いていきたいと思っています。